お酒に隠された秘密をとき明かします

Story no.9

日本酒はこうして造られる。日本酒入門 第1回

2015.2.25

年が明けて寒さも本番となりました。この寒さを待っていたかのように日本酒造りも、いよいよ本番を迎えています。それは大吟醸酒の仕込みが始まるからです。大吟醸酒や純米吟醸酒、純米酒など最高級のお酒の仕込みは1月から3月初めにかけての一番寒い時期に造られます。今の時期、酒蔵は緊張と熱気に溢れているのです。そこで今回と次回の2回連載で日本酒がどのように造られるのかを簡単に説明しましょう

1 米 日本酒に使われるお米の品種は数十種類あります。理想的なお米は粒が大きく、もと造りや仕込みの時に溶けにくい硬質の米が理想とされています。主な高品質酒を造る品種としては山田錦や雄町、五百万石、美山錦、八反錦、高嶺錦などがあります。

2 精米 普通酒や本醸造酒で30%以上、吟醸酒や純米吟醸酒では40%以上、大吟醸酒になると50%以上、特に品評会出品用の大吟醸となれば60%以上精白します。精白と言ってもこれ程までに高度な精米をすると、米自体が熱を持ち乾燥し、割れてしまう事が多いので慎重にゆっくりと時間を掛けて行わなければなりません。精米された米は熱が冷め適度な湿度に戻すために半月以上保管されます。精米してすぐに使うことは出来ないのです。

3 洗米、吸水、蒸米 米は手早く洗米します。米が余分な水分を吸わないようにするためです。そして、米を水に漬け必要な水分だけを吸収させます。米に含まれる水分は多すぎても少なすぎても美味しい酒にはなりません。そして米を蒸します。日本酒を造る場合、米は炊くのではなく蒸します。酒造の中には甑(こしき)と呼ばれる大きな蒸し器があります。

4 麹(こうじ)造り 酒造りの中で最も重要なのが麹を造る作業です。酒の麹は皆さんがよく目にする甘酒や味噌を造る麹とはかなり見た目が違います。酒造りに使う麹は米の表面ではなく米の内部に麹菌が入り込むように造ります。麹室(こうじむろ)という特別な部屋で麹は造られます。内部の温度は35度程度で乾燥した状態になっています。高温で乾燥した状態を保つ事で湿気を好む性質を持つ麹菌は米の内部にある水分を求めて米の内部へと繁殖してゆきます。このような麹を造らないと深い味わいの日本酒を造ることはできません。

5 もと造り 麹造りに次いで大事な作業がもと造りです。もとは出来る限り多くの酵母(糖をアルコールに変える役割の微生物)を造りだすために行われます。仕込みは7000〜8000リットル(一升瓶4,000本以上)の容量の大きなタンクで行われます。これだけ大量の蒸米や麹、水を発酵させるのには沢山の酵母を効率的に働かせなければなりません。その基本になるのがこのもとなのです。また、もとの性質は出来あがりの日本酒の味わいにも大きな影響を与えます。一般的には速譲法(そくじょう・ほう)で造られますが、生?法(きもと・ほう)と言われる江戸時代から行われてきたやや古い製法で造る場合もあります。生?法は手間の掛かる手法ですが独特の味わい深い酒を造りだす事が出来ます。山廃(やまはい)と呼ばれる?もこの生?と同様の造り方で行われています。ちなみに山廃もととは山卸廃止もと(やまおろし・はいし・もと)の略称です。もと造りは400リットルから500リットル程度の比較的小さなタンクで行われます。小さなタンクの方が管理しやすいからです。もとは速譲法では2週間程度、生もとや山廃もとの場合は1ヶ月程度かかります。

6 仕込み 普通は7000〜8000リットルの容量のタンクで行われますが、大吟醸酒はより精密な管理が必要になるために2500リットル程度の小さなタンクで行います。仕込みを行うには、まずもとを仕込みタンクに入れ、更に麹と蒸米、水を入れます、しかし一度に仕込みの全量分を入れる訳ではありません。通常は3回に分けて日を変えて入れます。

1日目はもとを全量ともとの2倍の量の麹と蒸米と水を入れます。そして良くかき混ぜます。麹が米のデンプンを糖に変え、更にその糖を、もと造りの段階で極限にまで増やされた酵母が消化することでアルコールや香りの成分が造りだされます。次の日は発酵が進むのを待つために様子を見ます。3日目には1日目に入れた2倍の量の麹と蒸米、水を仕込みタンクに足し入れます。更に翌日、前日に入れた2倍近い残りの麹、蒸米、水を加えます。こうして一般の酒はその後20日程度で発酵を終了させますが、大吟醸酒の場合は32日から35日くらい発酵を行います。

一応これで日本酒が誕生という事になりますが、まだまだ重要な作業があり、また今回書いた工程についての追加の説明もありますので、これ以降の話は次回といたします。

なお、このコラムを書くにあたっては矢板の地酒「十一正宗(じゅういちまさむね)」蔵元・森戸酒造(株)代表取締役・森戸康夫様にご指導を頂いております。

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小川 素市

PROFILE

小川 素市(おがわもといち)
新川屋(しんかわや)酒店三代目。61才。
酒の話になると止まらないという噂も。

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