お酒に隠された秘密をとき明かします

Story no.8

シャンパン?それともスパークリング・ワイン?

2014.12.15

年末最大のイベントといえば何と言っても「クリスマス」!子どもから爺さん婆さんに至るまで楽しみに待つ大イベントです。

そしてクリスマスと言えば「シャンパン」!
開けるとき栓がポンと勢いよく飛び出し、グラスの注ぐときれいな泡がグラスの底から昇り立つ。「今宵は二人で星を飲みましょうか!」なんて気障な言葉を言っちゃったりして。
そんなシャンパンというワインですが、一万年はあると言われるワインの歴史の中では一番新しいタイプのワインなんです。
でもアレレ同じような酒で「スパークリング・ワイン」と書いてある物もある。これは何が違うのか?どっちを選べばいいのだ?

シャンパンが生まれたのは今から三百年ほど前。日本で言えば赤穂浪士の討ち入りがあった元禄時代の頃です。そう言えば討ち入りも旧暦の12月14日(新暦では1月30日だけど)「忠臣蔵」と言えば年末必ず放映される人気時代劇。奇縁ですね。

シャンパンは皆さん聞き覚えのあるドン・ペリニヨンという神父さんが開発したと言われます。最高級シャンパンの銘柄にもなっているドン・ペリニョンですが、どうして神父さんがワインを、とお思いでしょう。実はキリスト教ではワインはキリストの血を意味するのです。ですから様々な儀式でワインが使われます。キリストの血ですから純粋で高貴な風味のワインでなければいけません。その為に教会や修道院は専用の葡萄園を持ち、神父の中からワイン造りの能力の高い人を選んで専用のワインを造らせていたのです。もっともこの頃は美味しいワインを売って教会や修道院の収入にしていたんですけどね。そして、そうした役目を務めていた神父さんの一人がフランスのシャンパーニュ地方の修道院でワイン造りを務めていたドン・ペリニヨン神父だったのです。

シャンパン誕生にはもう二つ欠かせないものがあります。それはガラス瓶とコルク栓です。ワインがガラス瓶に詰められるようになったのはシャンパンが誕生する数十年ほど前だったと言われています。そして、金属の栓がなかった当時、栓として最も適していたのがコルク樫の樹皮から作られるコルク栓だったのです。

シャンパンをつくるには発酵途中のワインを急速に冷やして一時的に発酵を止め、そのワインを瓶に詰め、針金でコルク栓を瓶にくくりつけて密閉します。そして今度は温度を少し上げると瓶の中で発酵が再び始まります。そして発酵によって発生する炭酸ガスをワインに溶け込ませるのです。シャンパンのガスの圧力はコーラの倍ほどありますので陶器などでは割れてしまいます。ガラス瓶でも今ほど品質が安定していなかった当時は割れてしまうことが多かったそうです。様々な苦労をしてドン・ペリニヨン神父はシャンパンを完成させましたが、当時はガラス瓶も貴重で極々限られた人だけしか飲む事が出来ない貴重なワインでした。

しかし、明治維新の頃(1868年)になるとドイツでは良質なガラス瓶を大量に生産できる技術が開発され、ガラス瓶もそれまでよりはるかに安価で製造できるようになります。更に当時のヨーロッパは産業革命まっただ中。蒸気船や蒸気機関車の実用化によって世界の富がヨーロッパに集まる時代でした。そうした高揚した華やかな気分にピッタリとハマったのが発泡性のワイン「シャンパン」でした。

シャンパンの美味しさとその製法は、あっという間にフランス各地はもとより世界中に広まり、似たようなワインがイタリアやスペイン、アメリカやオーストラリアなどでも造られるようになります。そして、シャンパンと名乗って売り出したのです。これに驚いたのは元祖「シャンパン」を造っていたシャンパーニュ地方の人たち。シャンパーニュ地方の人たちは自分たちの土地で栽培された葡萄で、自分たちの地域で製造されたものだけをシャンパンと呼ぶべきだ、それ以外の発泡性ワインは別の名前を付けろと主張し始めます。こんな事があってフランスでもシャンパーニュ地方以外の産地で作られる発泡性ワインはヴァン・ムスーやクレマンとラベルに書かれるようになり、イタリアではスプマンテ、スペインではカヴァと名乗るようになりました。またアメリカやオーストラリア、チリあるいは日本などそれ以外の国で造られるシャンパン風のワインをスパークリング・ワインと表記するようになったのです。

ちなみにフランス政府はシャンパンではなくシャンパーニュと言ってほしいようです。しかし、実際の発音に近いシャンパンという表記も必ずしも間違いという訳ではありません。
これがシャンパンとスパークリング・ワインのヒストリー。これからの季節、是非ご堪能ください。

(おまけ)シャンパンやスパークリング・ワインはお正月のおせち料理にもよく合います。

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小川 素市

PROFILE

小川 素市(おがわもといち)
新川屋(しんかわや)酒店三代目。61才。
酒の話になると止まらないという噂も。

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