お酒に隠された秘密をとき明かします

Story no.7

ボージョレ・ヌーヴォーの真実

2014.11.12

今年もあと二ヶ月足らず、この時期のお酒の話題と言えば「ボージョレ・ヌーヴォー」は外せませんね。さて、この「ボージョレ・ヌーヴォー」とはどんなワインなのでしょうか。

まず、この「ボージョレ・ヌーヴォー」というワイン名を訳すると「ボージョレ」はフランスの地方の名前・ボージョレ地区を意味し、「ヌーヴォー」は今年の秋に収穫された葡萄で造られた新酒という意味になります。ですから「ボージョレ・ヌーヴォー」とはフランスのボージョレ地区で造られた新酒という事になります。

さて、ボージョレ地区とはフランスのどの辺りにあるのでしょうか。ボージョレ地区はフランス第二の都市「リヨン」すぐ北側に広がる丘陵地帯にあります。広さは南北に70kmほど、東西に15〜20kmほどの長方形の形をした地域です。栃木県で例えれば北はわが矢板市から南は小山市、東は喜連川から西は塩谷町の船生、これくらいの範囲で囲まれた地域と言えば想像しやすいでしょうか。ボージョレ地区はフランスを代表する高級ワイン産地の「ブルゴーニュ地方」に含まれる地域ですが、ボージョレ地区で造られるワインはボージョレ地区以外のブルゴーニュ・ワインとはかなり趣が異なります。ところで「リヨン」の街はパリからは南東へ400km、地中海の大都市マルセイユからは北へ300kmの辺りに位置しており、パリから地中海のリゾート地「コート・ダジュール」に向かう高速道路の中間地点にある都会です。大河ローヌ川を利用した水上交通、輸送路の要として繁栄してきた都市で、また美食の街としても知られ、1960年代に始まった「ヌーベル・キュイジーヌ(新しい料理)」と言われるフランス料理の一大革命を牽引した歴史があります。

ボージョレ・ワインはガメイというブドウ品種で造られた赤ワインが99%、残り1%だけシャルドネ種から造られた白ワインがあります。ボージョレ地区以外のブルゴーニュ地方ではピノ・ノアール腫でほとんどの赤ワインが造られていますので、大きな違いがあります。ガメイ腫の葡萄はワイン醸造用の葡萄としては実が大粒で、収穫時期も早い、いわば早生の品種になります。一方ピノ・ノアール種は葡萄の粒はやや小さめで収穫時期が遅くなります。ガメイ腫の葡萄はピノ・ノアール腫に比べて収量も多く、このためピノ・ノアール腫は王侯貴族などの上流階級のワインとされ、ボージョレ・ワインは大衆のワインとされてきました。

もともとボージョレのワインは翌年の春にはびん詰めされて市場に出回り、1〜2年のうちに飲まれてしまうのが大部分でした。要するに熟成させなくても若いうちから美味しく飲めるワインなのです。ただし、ボージョレのワインの中にも十年以上長く熟成した方が美味しくなるかなり高価なワインもありますのでボージョレ・ワインの名誉のために付け加えておきます。そして「ヌーヴォー」として売られるボージョレ・ワインは更に若々しいうちから美味しく飲めるように特別の醸造法を採用しています。マセラシオン・カルボニック法と言われる醸造法がそれですが、これについての説明はまた別の機会に書く事にしましょう。

では、ボージョレ・ワインは単なる大衆ワインなのかというとそれは間違い。ボージョレ・ヌーボーのみずみずしい果実の風味、例えばストロベリーやブルーベリー、フランボアーズ、サクランボなど赤や紫色の果実を想わせるフレッシュでチャーミングな味わいと渋みや苦みの少ない絹のように軽やかなサラリとした飲み心地のワインは世界中探してもナカナカ巡り合えるものではありません。

ただし、一口にボージョレ・ヌーヴォーと言っても沢山の、数百以上の様々な造り手が造っており、その造り手によって風味もイロイロ。マアマア程度の物から絶品と言える品質の物まで大きな差があります。それは例えれば同じ「コシヒカリ」のお米でも生産された地域や農家によって美味しさに差があるのと似ているかもしれません。ワインは原料に葡萄しか使いませんので、いかに高品質のおいしい葡萄を作るかでワインの品質も大きく変わってくるからです。

なんだかんだ書きましたが、ヤッパリ「ボージョレ・ヌーヴォー」は晩秋の大きな楽しみ。

今年は11月20日(木曜日)が解禁日。ワクワクしながら解禁の日を待つ事にいたしましょう。皆様が絶品の「ボージョレ・ヌーヴォー」に出会える事を祈りながら!

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小川 素市

PROFILE

小川 素市(おがわもといち)
新川屋(しんかわや)酒店三代目。61才。
酒の話になると止まらないという噂も。

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