お酒に隠された秘密をとき明かします

Story no.3

ハイボール・ヒストリア

2014.07.15

蒸し暑いこの時期に飲みたくなるお酒といえば、まずはビールですが、近頃はハイボールが飲みたくなるという方も増えています。ウイスキーをソーダ(炭酸)で割ったハイボールは心地よいウイスキーの風味とスッキリとした飲み心地で人気になっています。

ところで、この「ハイボール」、なぜハイボールと呼ばれるようになったのでしょうか。

時をさかのぼること150年、1800年代後半のアメリカ。南北戦争(1861年〜1865年)とそれに続くアメリカ大陸横断鉄道の建設(1863年着工、1989年完成)、カウボーイそしてインディアンとの戦い、まさに西部劇の時代にハイボールという飲み方が生まれたと言われています。

当時アメリカでは大陸全土に鉄道が敷設され始めていました。しかし、もちろんほとんどが単線。烏山線や真岡鉄道などのローカル線を思い浮かべればよいでしょう。反対方向から列車が来ると、一方の列車は駅にて反対方向からやってくる列車が通り過ぎるのを待たなければなりません。

反対方向からやってくる列車を知らせるのが信号ですが、当時は電球がありませんでしたから、今日のように青と赤のライトで知らせることができません。そこで、高い柱に滑車で吊るした大きな玉を上げたり下げたりして、反対方向からの列車を知らせていました。その玉を駅員が駅から少し離れた所で、望遠鏡で確認し、列車の運転手に進行あるいは停止の指示をしていたらしいのです。

玉が下がっていると進め、上がっていると停止というのが決まりでしたが、列車の本数だって今ほど多くはありません。のどかな時代でしたから、列車が来るまでの暇な時間、駅員たちはバーボン・ウイスキーを一杯やりながら、信号の確認をしていたのです。

ある時、ウイスキーを飲みながらボーっとしていた駅員がたまたま望遠鏡で信号を確認していた時、信号の玉が上がっている事に気がつきました。駅にはまさに発車しようとしている列車がいます。グラスにはバーボン・ウイスキーがまだ残っています。ウイスキーを残すのはもったいないと、その駅員、手元にあったソーダ(炭酸水)をグラスに注いで、それを一気に飲み干して、駅に駆けていったそうです。後にその炭酸ソーダ割りのウイスキーの旨さが忘れられず、行きつけの酒場でソーダ割りを飲んでいたのが広まった、というのがハイボールの始まりといわれる最も有力な説になっています。

玉(ボール)が高く上がった(ハイ)、それでウイスキーの炭酸割りの飲み方をハイ・ボールというのです。ちなみにその後、炭酸水(ソーダ)ではなく、ウイスキーのコーラ割りも旨いと言う人が出てきて人気となりますが、これをコーク・ハイ(コーラ・ハイボール)と言います。また、終戦直後の日本ではウイスキーは高価でなかなか飲めなかったので、焼酎を炭酸水で割った飲み方が流行ります。これを焼酎ハイボール略してチューハイと言います。

アメリカの西部開拓時代、ちょっと間抜けで酒好きな駅員さんが偶然に見つけたハイボールが150年経った今日、遠く離れた日本でも身近な飲み方になっているなんて、チョット面白いですよね。

ちなみにハイボール、安いウイスキーを美味しく飲むのにも適していますが、高品質なウイスキーでやるとこれが絶品。普通の水割りで飲むよりもウイスキーの香りも味も格段に引き立ちます。バーボン・ウイスキーはもちろんピュアモルトやシングルモルトなどのウイスキーで造るハイボールは絶品です。ただし、このときにレモンは入れないでください。また、炭酸水(ソーダ)も余計なフレーバーの付いていない高品質のピュアな炭酸水を使ってください。これをプレミアム・ハイボールと言います。蒸し暑さが吹っ飛ぶこと間違いなしです!

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小川 素市

PROFILE

小川 素市(おがわもといち)
新川屋(しんかわや)酒店三代目。61才。
酒の話になると止まらないという噂も。

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